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釉薬のバリエーション

釉薬(ゆうやく)とは別称でうわぐすりともいわれ、器の表層を覆う色々な表情をしたガラスの層をいいます。この釉薬は素焼きの器にくすりがけされ焼成する事でガラス質になり、器の強度を増すとともにしっかりと水をはじく機能をつくり上げます。
土と釉薬の関係は、料理でいうと素材と味付けのようなもの。様々な釉薬があることで器はより特徴的となるため、其々の陶工はその産地の土にあった独自の味付けとしての釉薬をもっていてそれが大きな個性となります。興味深い事は、焼き物の産地
は狭いコミニティーでありお互いが顔を知り合った仲間として人間関係が成り立っているため、別の陶工の個性を邪魔するような釉薬を持つ事を互いに嫌います。そのため予定調和では絶対に生まれないような絶妙なバランスで、産地全体が美しい旋
律の釉薬のバリエーションを持つ事になります。このように長い年月をかけて培われた窯業産地のネットワークからうまれた釉薬を総合的に取り揃え、皆さんの食卓を様々な表情で彩ります。

信楽の熟練陶工

信楽の地には今もなお、ひっそりと器づくりに励む作り手たちがいます。世代を超えて高度な技術を受け継ぎながら、この地に暮らし、それぞれが得意な成形方法や釉薬を持ち、個性あふれる器を作っています。素晴らしい歴史と技術・品質があるにもかかわらず、信楽が他の六古窯と比べ器の産地としての知名度が少ないのは、豊富な粘土ゆえ、大きな茶壺や甕(かめ)などが主流だったからです。今は時代が移り変わり、そこに注がれていた設備や技術が食器などの小物に使われるようになってきました。

作家と作り手の違い

作家と作り手と聞くとよく似た言葉に感じられると思います。しかし、そこには似て非なる違いがあります。作家は直接その名前を客前に出し食器を売ります。一方で、作り手はあくまでも地場産業の分業された仕事の一つのパートといえます。私たちは作り手というニュアンスに誇りをもっていて、それは器の在り方にも関係していると感じます。つまり、作り手は作ることに専念するプロであり、その表現は控えめでよいという事です。料理人も基本的に匿名でその仕事が歴史に残りにくいと言われますが、両者とも気持ちの奥には、“主役は素材だ” という思いがあるのかもしれません。